長崎空港(長崎県大村市)に近い大村湾の海岸が季節外れのにぎわいを見せている。青や茶、ピンクなどさまざまな色のガラスでできた人工の砂が太陽に反射して輝き、「インスタ映えする」と人気があるためだ。元々は、海の水質浄化につながるアサリを集めようと長崎県がまいたものだが人まで呼び込み、担当者は驚いている。
2019年12月中旬の週末、大村市森園町の海岸では、親子やカップルが相次いでスマートフォンを片手に砂浜を撮影していった。福岡県久留米市から来た女性(20)は「インターネットで話題になっていたので寄ってみた。キラキラして、とてもきれい」と笑顔で話した。
大村湾は外洋とつながっているものの、海水が行き来する部分が狭く、周りのほとんどが湖のように陸に囲まれている。そのため、湾内と外洋の間で対流しにくく、水質が悪化しやすい。その影響で、植物プランクトンが大量に発生し、赤潮や酸素不足が問題になっている。
大村湾の富栄養化の対策として県環境保健研究センターが着目したのがアサリだった。アサリは植物プランクトンを餌にしており、研究で市周辺の海域にアサリの幼生が集まりやすいことが分かった。ところが、埋め立てが進んだ海岸は、幼生が好む1ミリ程度の砂浜ではなく泥砂で、生息環境に向いていなかった。
そこで、粒の大きさをそろえやすいガラスの人工砂を活用することに。ビール瓶などの廃棄されたガラスを砕いて角を丸めたもので直径は約1ミリ。11年にコンテナに人工砂を入れて海に設置したところ、1年後に1平方メートル当たり約220個のアサリを確認した。これらを受け、約6500万円かけて16年6月、約200メートルにわたって砂浜に約3000立方メートルの人工砂を敷き詰めた。
翌年1月にその場所を確認すると、1平方メートル当たり525個のアサリがいた。同時に人工砂の見栄えが評判になり人も呼び寄せた。「まさか、こんなに集まるとは」。センターの粕谷智之専門研究員は、思わぬ人気に驚いたという。
アサリはその後も毎年確認されているが、18年からはアカエイによる食害が発生。生息数が減り、被害防止の対策にも取り組む。粕谷さんは「将来的にはガラスの砂浜で潮干狩りができるようになり、さらに多くの人に楽しんでもらえるようになれば」と話した。【足立旬子】
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